2011年12月16日金曜日

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾・村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮社)を読了。

音楽を聴くひとにとっても、音楽を演奏するひとにとっても、たぶん無茶苦茶に面白い本。おそらく聞き手が熱狂的な音楽ファンであり、かつ、一流の表現者(小説家)であるということが、この対談をここまで面白くしている。小澤征爾と村上春樹との個人的な信頼関係も十分に作用しているであろうし、村上春樹が適度に素人であることも、本書に限っていえばプラスになっていると思う。対談相手が評論家や音楽関係者であれば、小澤征爾がここまで胸襟を開いて語ることはなかったのではあるまいか。言葉の随所に彼がくつろいでいることが窺える。

村上春樹が投げかける問、それに答える小澤征爾という図式がメインのように一見思えるが、これをただの Q&A だと思ってしまうと味気ない。対話の作法としての面白さこそ、読者は味わうべきなのかもしれない。両者ともに一流の表現者であり、ある意味、容赦のなさ躊躇のなさが双方にある。表面的には、小澤征爾はけっして村上春樹の問を否定することはないのだが、「そうですね」、「そうそう」、「うん、そうだねえ」と、ひとつひとつの間(ま)に微妙な違いがあって、この間に何が含まれているかを想像することは読者にとってもかなりスリリングなことなのだ。楽器が弾けて、アンサンブルを楽しんでいる人が読んだら、私以上にたくさんのことが解るに違いない。